(1925年1月出版)
No. 51(6.1)興安嶺の落葉松(北滿)
零下四十度の寒さ、シヤツターはもう利かない、雪は銀粉の如く大氣の中にちらちらと降る中を、脚を沒する積雪を踏みつけて登つた、山中の樹上に體を括リつけて撮したのは此寫眞だ、お蔭で右手の指四本はトウドウ凍傷にかつて了つた。
兴安岭的落叶松(北满)
在零下四十度的严寒中,快门几乎不能用了。当银粉般的雪花漫天飘舞时,我们踏着没膝的积雪登山,将身体绑在山中的树梢拍摄了这张照片。为此我的右手四指全都冻伤了。
No. 52(6.2)雪中の樵作業(北滿)
酷寒の四十七度の興安嶺森林中は壯嚴なる霜の花によつて飾られてゐる、此の山中に伐木作業をする光景を見たものでなくては勞働の眞の尊さは解らないのである。ペーチカの前に寢コロンで居る都會人の到底想像もつかない世界なのだ。
雪中伐木作业(北满)
兴安岭森林在零下四十七度的酷寒中,被庄严的霜花装点得银装素裹。若非亲眼目睹这山中伐木的场景,便无法理解真正的劳动可贵。这是蜷缩在暖炉前的都市人,绝对想象不到的世界。
No. 53(6.3)興安嶺の樵夫(北滿)
頭からツマ先迄毛皮を以て装身した樵夫達の服裝は烏渡遠目には人か獸か判然しない、鼻下の髯に呼氣が凍結して霜花をつけて居るのも奇觀だ、丸太小屋の光景も此人達には好い對象である。
兴安岭的樵夫(北满)
从头到脚裹着毛皮的樵夫们,远看竟分不清是人是兽。他们呼出的气息在鼻下胡须上凝结成霜花,堪称奇观。圆木小屋的景象,也与这些人格外相称。
No. 54(6.4)牛肉の斧割(北滿)
牛肉の片塊は凍結して全く石塊の如く堅い、大なるものは鋸で挽きそれを爼上斧を以て割つて之れを煑るのである。零下四十七度の寒さを體驗しないものには全く想像もつかない現象である。
斧劈牛肉(北满)
冻硬的牛肉块坚硬如石,大块的需先用锯子分割,再用斧头在砧板上劈开烹煮。若非亲历零下四十七度的严寒,这景象实在是难以想象的。
No. 55(6.5)松花江の結氷(北滿)
冬季哈爾賓の氣溫は零下三十度から三十四五度位に下降する、哈爾賓の生命とでも謂ふ松花江は、十一月から翌年四月迄全く結氷に封ぜられて一大氷原が出現し、兩岸の交通は陸上と異ならざる聯絡を保つに至るのである。
封冻的松花江(北满)
冬季哈尔滨气温可降至零下三十至三十五度。这条堪称哈尔滨生命线的松花江,从十一月到次年四月间完全封冻,由此形成了广袤冰原,两岸交通也变得与陆路无异。

No. 56(6.6)松花江上のサーニ(北滿)
驢馬に牽かせたサーニがチリンチリンと鈴を鳴らして銀盤のやうな氷上を滑つて行く、自動車は怪物のやうな警笛を鳴らして自然のトラックを走驅する、今迄河一筋に依つて隔てられた兩岸には冬に應はしいローマンスが取り交付されるのであらう。
松花江上的雪橇(北满)
骡马牵拉的雪橇铃铛叮当,在银盘般的冰面上滑行。汽车像怪物般鸣着喇叭,在天然冰道上奔驰。曾被江水阻隔的两岸,此刻正上演着只有在冬季才特有的浪漫故事。
No. 57(6.7)木の都吉林
松花江上流で伐り出された巨木は、筏として流され、吉林の碼頭に集る、かくして吉林は正に木の都である。氷雪に埋れた江山の畔りにある町は淋しい。
木都吉林
松花江上游采伐的巨木被扎成木筏,顺流聚集在吉林码头,使这里成为名副其实的木都。这让冰雪覆盖的江城,透露着几分寂寥。
No. 58(6.8)氷上の帆掛橇(營口)
結氷に封ぜられた遼河の奇觀は此の帆掛橇だ、氷上のヨットとして冬の行樂に或は運搬に用ゐられて居る。
冰上帆橇(营口)
封冻的辽河上最奇特的莫过于这种帆橇,它如同冰上的帆船,既用于冬季娱乐,也承担着运输之职。
No. 59(6.9)大連港の凍結
大連の冬は十一月頃胡砂吹く風と共に先づ陸から來る、陸上の山も家も人も全く冬籠つて了つても海は未だ蕩漾として青い水を湛えて冬の巨人と對抗して居るかに見えた。さらして居る間に一と度遽然として零下十幾度といふ大寒が來襲すると海上は一夜にして全面陂玻璃に敷きつめられる。而して凍つた此處彼處にもやつてゐた船は大銀盤上に配せられて美しい世界を展開する。
大连港封冻
大连的冬天约在十一月随着飞沙走石的北风,而率先从陆地袭来。当群山、屋舍与人们都已进入冬眠,大海却仍荡漾着碧波,似在与冬巨人进行着对抗。然而当寒流骤至,气温急降十几度后,海面一夜之间便像铺就了整块玻璃。冻结在冰层中的船只,犹如点缀在银盘上的装饰,由此展开了一幅瑰丽的画卷。
No. 60(6.10)南支那の戎克(大連)
戎克は如何にも古典的な船である、古い支那そのもの如く。戰爭と戀と貿易とを載せて、蝙蝠の羽のやらにアノ祸色の帆を擴げた姿を見るものは、マドロスの傳說の中に見出す怪異を思ひ起させるであらら。
殊に南方から來る戎克には船體の舢艫部を極彩色に裝飾した美しいものがある、北方の港大連の海上に凍結した處は南方の美娘を生捕つた形である。
华南帆船(大连)
帆船是极具古典韵味的船舶,宛如古老中国的化身。看着它们张着蝙蝠翅膀般的褐帆,载着战火、爱情与贸易的身影,总令人想起水手传说中的那些奇幻故事。
特别是南方来的帆船,往往在船头船尾都装饰着艳丽的彩绘。当这些船只被困在大连港的冰海中时,恰似生擒了南国的美娇娘。
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